ドン・キホーテのお店づくりの方法
大原孝治氏が代表取締役社長を務めているドン・キホーテの買い場は、単なるお題目でも言葉遊びでもありません。同社が言う買い場は、売る側に身を置きながら買う側に立って初めて成立します。しかし売る側と買う側の立場の利害は、一般的に相反します。お客にとって都合の良いことが、必ずしも店にとって都合がよいとは限りません。むしろその逆のほうがほとんどです。それでも優先するのは、お客様の都合たとえ管理しにくくても万引きの発生率が高くなっても、お客様が面白さをお望みなら面白い売り場を作るべきだと大原氏は言っています。たとえば圧縮陳列にしても、商品集めや売り場づくりにしても売る側からすればやりにくく面倒極まりない手法です。少なくとも管理のしやすさとは、対極にあるものです。当然ロス率も高まります。もちろん単に買う側の都合だけを突き詰めていけば、採算度外視となりそもそも企業経営が成り立っていきません。逆に売る側の立場を優先させれば、管理手法の強化につながり今度は既存のチェーン企業となんら変わらなくなってしまいます。ではどうすればいいのか、売る側と買う側の境界をあいまいにしておくことがその答えです。つまり自分が売る側か買う側か、一瞬わからなくなるような状態に置くことだといいます。要は売る側にも買う側にも振り切らないあいまいさ、言い換えれば相反する要素を融合させたすぐれたバランス感覚を維持することができて初めて顧客本位となり、その結果店として利益が出せるという考え方です。こうした独自の経営方針も大原孝治氏が手掛けるドンキホーテならではの面白みの一つと言えます。